妊娠について
妊娠
妊娠(にんしん)は、哺乳類などの胎生の動物で、雌の胎内(子宮内)における、受精卵の着床から出産、もしくは流産するまでの経過、およびその状態を指す。
受精後平均266日、腹の子(胎児)が約3,000g内外にまで育ったところで出産に至る。 妊娠中の女性は「妊婦」、分娩直前の女性は「産婦」、分娩後は「褥婦」、女性の胎内にいる子どもは「胎児」、生後4週間までの子どもは「新生児」と呼ばれる。
受胎
排卵
女性は胎児期から、卵巣内に原始卵胞を持っている。平均して12 – 13歳で初経(当初は無排卵月経であることが多い)が起こり、その約1 – 2年後から原始卵胞は毎周期いくつか発達を始め、そのうち成熟の最終段階に至った1個が卵巣から排出されるようになる。この成熟卵子の排出を「排卵」という。排卵された卵子は卵管の先端(膨大部)に拾われる。
毎期の月経開始とともに、卵巣内で次の排卵に向けた卵胞の発育が始まる一方、子宮では月経終了後に再び着床のための子宮内膜を用意して排卵を待つ。個人差はあるが、一般に28日前後を1周期として、排卵が起こる。(⇒卵胞形成)
受精
排出された卵子に性行為などの方法で精子が到達し、卵管膨大部で「受精」が起こる。受精した卵を「受精卵」と呼ぶ。卵子は一旦受精すると、それ以外の精子は受け付けない。
多胎妊娠
まれに、一卵性双胎、二卵性双胎が生まれる(⇒双生児)。現在は体外授精などの不妊治療により、三つ子(三胎)、四つ子(四胎)が生まれることもある(⇒多胎児)。Hellinの法則によるとn胎の発生する確率は89のn-1乗に1例である[1]。多胎妊娠は妊娠経過中に多々の合併症を生じることも多く、出生予後も単胎に比べると良くない。そのため、体外受精の時に子宮内に戻される受精卵の数は3個までと日本産科婦人科学会によって会告で通達されている。
排卵後に受精しなかった卵子は約24時間で寿命が尽きて消滅し、妊娠準備のために肥大していた子宮内膜は排卵から14日前後に経血として体外へ排出される(⇒「月経」)。
妊娠可能時期
卵子は受精をすれば着床するが、しなければ数時間から24時間以内に退化してしまう。その一方で精子は最大で7日ほど、通常は数時間から3日ほどの寿命を持つため、妊娠可能時期は最大で排卵の前後8日間、可能性が高くなるのは排卵日1日に精子の受精可能3日を足した4日ほどとなる。
子宮
排卵後の卵胞は「黄体」となり、「黄体ホルモン(プロゲステロン)」を分泌する。「黄体ホルモン」は子宮を着床に適した状態に整える。この黄体の寿命は妊娠成立しなければ排卵から約14日前後で、黄体ホルモンの分泌が終わって子宮内膜を保持できなくなると、月経が起こる。
着床
受精卵はゆっくりと細胞分裂を繰り返しながら卵管を下り、およそ48時間かけて子宮にたどり着く。そして、子宮内膜の一箇所に取り付いて着床の過程を開始し、徐々に潜り込んでいって根を下ろし、排卵から7 – 11日後に着床状態が完成する。この着床をもって、妊娠成立と見なされる。着床した受精卵からは、胎盤が形成され始める(なお、胎盤は妊娠中期に入る頃までに徐々に完成する)。
すべての受精卵が着床に成功するわけではなく、染色体に異常がある受精卵など一定の割合は淘汰される。受精卵が着床しなければ妊娠は不成立で、排卵から12 – 16日後に月経が起こる。
子宮外妊娠
受精卵が何らかの理由で卵管など子宮以外の場所に着床した場合は子宮外妊娠と呼ばれ、放置すると危険な状態になる。産婦人科での緊急な処置が必要となる。
妊娠判定
おすすめPickUP
着床した受精卵の初期胎盤から分泌されるヒト絨毛性ゴナドトロピンという特有のホルモン(これが黄体の寿命を延ばして子宮に着床状態を維持させる)の検出により、女性の尿が少量あれば妊娠の有無は簡単に判定できる。妊娠検査薬は薬局で求めることができるが、より確実を期するためには医療機関を受診する。
妊娠期間の数え方
受精後胎齢と月経後胎齢の2つの数え方がある。前者は発生学で用いられ、後者は臨床産科で用いられる。
受精後胎齢
受精初日を1日目として、満日数、満週数であらわす。
月経後胎齢
最終月経初日を1日目として、満日数または満週数で表す。
妊娠の経過
妊娠超初期(妊娠0~3週頃)
妊娠初期(1~4ヶ月)
妊娠中期(5~7ヶ月)
妊娠後期(8~10ヶ月)
受精卵は、妊娠7週6日までは「胎芽」、8週以降は「胎児」と呼ばれる。胎児の諸器官の原型は妊娠初期にほとんどが形成される。諸器官は妊娠中期に著しく成長し、22週頃には早産してもNICU(新生児集中治療室)の保育器内で生存できる場合がある。36週以前、または2,500g未満で生まれた場合は低出生体重児(未熟児とは言わない)、1,500g未満の場合は極低出生体重児、1,000g未満の場合は超低出生体重児と呼ばれる。
正常妊娠
検査として、胎児の心拍数を母体の陣痛の強さと共に記録する胎児心拍数陣痛図がある。胎児の自律神経が発達してくると心拍数が細かく振れる様になる。これを基線細変動と言う。
異常妊娠
検査は、胎児心拍数陣痛図では基線細変動が見られなくなる。これを基線細変動消失と言う。陣痛に同期してやや遅れて胎児の心拍数が低下する。これを遅発性一過性徐脈と言う。基線細変動消失や遅発性一過性徐脈が見られた場合は胎児仮死と考える。胎児仮死の場合は、たとえ肺が出来上がっていない妊娠36週未満であっても急いで分娩(急速遂娩)を行う必要がある。急速遂娩には帝王切開も含まれる。
引用元:ウィペディア